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「父の破壊」(1974年)の展示 © The Easton Foundation/Licensed by JASPAR, Tokyo, and VAGA at Artists Rights Society (ARS), New York
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 ルイーズ・ブルジョワ(1911~2010)の名前は知らなくても、六本木ヒルズの蜘蛛(くも)の彫刻と聞けば、ピンとくる人は多いだろう。国内では27年ぶりとなる大規模個展が、東京・六本木の森美術館で開かれている。愛、憎しみ、嫉妬、不安といった感情を昇華させた作品群が、ひりつくような切実さを伴って鑑賞者に迫ってくる。

「彼女は私を見捨てた」

 細く長い脚を伸ばし、卵を抱えた巨大な蜘蛛。高さ10メートルの彫刻「ママン」は、2003年の六本木ヒルズ開業以来、シンボルとして親しまれてきた。「一方で、作家のことは実はあまり知られていないことに気づいた」と片岡真実館長。今展では彫刻や絵画、インスタレーションなど100点以上を紹介し、キャリアの全体を見通せる。

 家族をめぐる幼少期の記憶が創作に大きく影響している。その一つが、病気の母を介護し、自身が20歳の時に母を亡くしたことだ。「私を見捨てないで」と題した第1章は、母との関係性に焦点を当てる。

 母はタペストリーの修復業を営んでいた。糸を吐き出して巣を直し、子を守るためには攻撃的にもなる蜘蛛は、母親の象徴として何度も作品に登場する。「かまえる蜘蛛」は、獲物や敵に襲いかかろうと身構える蜘蛛の姿を通して、強さを内包する母性を表現している。

 同じ部屋には、1978年の個展で上演された、スーザン・クーパーによるパフォーマンス映像が。「彼女は私を見捨てた」と歌う痛切な声が響く。

〝父を食べる〟ことで復讐を…

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